自ら仕事をつくりだす

そこからまた
新たな仕事が生まれてくる

芙蓉建設株式会社 / 代表取締役 大森 彦一さん (肩書はインタビュー時点。2019年4月1日で代表取締役会長に就任)

芙蓉建設と聞くと、社名そのままに建設の会社だと思うかもしれないが、芙蓉建設の仕事は建設にとどまらない。

建設をはじめ、土木、不動産、ビジネスホテルや温浴施設、居酒屋、さらに介護施設の運営まで、さまざまな事業を展開している。

「自分たちで仕事をつくりだすことができるのが、私たちの強みです。受注するだけでなく、仕事を自らつくりだすと、またそこから次の仕事が生まれ、広がってきています」

大森社長は深くうなずきながら話しだした。

開発事業の土木工事からスタートした同社は、事業を進める中で、建築部門の必要性を感じて建築の仕事を始めたという。

「開発していると、この土地にはアパートが向いているな、ここは店舗に適しているなというのがあり、それなら自社で建築までやった方がいいのではないかと思ったのが始まりです」

建築を始めると、今度は設計も自社で行った方が競争力が高く、スピードアップにもつながることから設計部門を設置。さらに建築したアパートの運営管理なども自社で行っていこうと、不動産部門も起ち上げた。

事業の多角化はまだまだ広がっていく。
自社でビジネスホテル、温浴施設、居酒屋の経営にも乗り出した。

「ビジネスホテルや温浴施設に向いている土地のオーナーさんに建設を提案していきたいと考え、さらに建設したホテルを借り上げて運営もできればと思い、まずは自社でノウハウを身に着けようと始めました」

「建設の提案から工事、事業運営まで手掛けることで、オーナーさんとwin winの関係になれるような事業をつくりだしているんです」

大森社長は自信にあふれた笑顔を見せる。

大きい会社より
強い会社をつくりたい

「でも、ここまで順調にきたわけではないんですよ」

そう言って、社長は振り返る。

不動産会社の開発部門の子会社としてスタートしたという同社。学生の頃から自分で会社をやりたいという思いを抱いていた社長は、会社起ち上げの話に、迷わずうなずいたという。

「その時はできるって思っていたんですよね。今思うと、とんでもない自信だなと思いますが、でも踏み切る時は踏み切らないと。100%で踏み切るなんてことはありませんからね」

設立当初は1人で積算し、現場を見て回り、寝る間を惜しんで仕事をしていたという。

「自分がやりたいことで、とにかく仕事がおもしろかったので、苦にならなかったですね」

ところが設立から15年余りが経ったころ、親会社が倒産してしまった。

「個人の財産まで担保に入れて、親会社の社員も全員引き受けたので、本当に大変でした。その負を長く引きずったので、10年ぐらいは苦しい時代が続きました」

支払いや経営を考えると、寝ても1、2時間で目が覚めてしまう生活が3、4年は続いたという。それでも前に進み続けた。

「もうあとがないので、進むしかありませんでしたから。大きな負債を返していくには小さな事業では無理なので、とにかく仕事をしました」

そんながむしゃらな頑張りにより、仕事は次第に軌道に乗り、持ち直していった。

「その苦しい時代があったからこそ、強い会社をつくろうと思いました。会社を存続させるには、大きい会社より強い会社。そして一本の大きな柱より、何本もの大きな柱をつくることが必要です」

事業の多角化を進めてきたのも、試練を経験したからこそ。そこからさらに新たな柱づくりとして、デイサービスやグループホームなどの福祉事業にも乗り出した。

若手社員の頑張りが
会社の活力になる

現在も、これからも、同社は同じ場所に立ち止まっているつもりはない。

「数年後には、さらに新しい分野に進出しているかもしれません。常に必要とされる事業を考え、対応していきたいと思っています」

大森社長はそう言って楽しそうな笑顔を浮かべ、それには若手社員のアイデアや意見も大切だという。

「若い人はやる気になるとすごいなと思います。どうしたらもっと若い社員が動きやすくなるか、意見を聞きながら、バックアップしていきたいと思っています」

その取り組みとして、動き出したのが社内の委員会制度。若手社員で委員会をつくり、お客様向けのイベントなどの提案をしている。

若手が企画から運営まで行って開催した、オーナー向けの感謝祭はその一つ。

「みんな主体性を持って取り組んでいて、私が思いつかない企画もたくさんありました。部門間の交流もあり、そこから新たなアイデアが生まれてきています」

社長は満足そうにほほ笑みます。

そんな芙蓉建設が求める若者とは?

「自主的にいろいろなことに挑戦する人がいいですね。仕事を楽しくできるようにする人です」

ここ数年、積極的に若手の採用も進めている。

「若手が頑張ってくれると、会社の大きな活力になりますからね」

「若い人にはどんな仕事も熱意を持って取り組んでほしいと思います。担当者の熱意は相手に伝わりますから。それが自分の信頼となり、会社への信用になります。そしてやがて自身の成長へとつながっていくでしょう」

若手社員の意見も取り入れながら、どんな事業を展開していくのか、どんなことに挑戦していくのか。芙蓉建設のこれからが楽しみだ。

聞き手:澤伸恭(山梨大学地域未来創造センター)

※2019年2月25日にインタビューを実施しました。
※芙蓉建設株式会社 大森 彦一さんは、2019年4月1日で代表取締役会長に就任しました。

芙蓉建設グループ
(芙蓉建設㈱・芙蓉ホテルサービス㈱・㈱フジエステート)
山梨県富士吉田市下吉田5-15-29

【事業内容】
総合建設業(土木建築工事の施工・設計)、不動産業(賃貸仲介・管理、売買、貸付)
サービス業(ホテル・温浴施設・飲食店経営)、福祉事業(介護施設「桜森荘」経営)

【HP】
http://www.fuyo-kensetsu.co.jp